2023年9月にイギリスに来て、早5カ月が経とうとしています。
現在NHSのCommunity Hospital(地域病院)で理学療法士としてフルタイム勤務している私が気付いたイギリスの医療の特徴(びっくりしたこと)をまとめてみたいと思います。
出来ることが多い!
一番印象的だったのが、イギリスでは様々な医療従事者がさらなる教育課程を経ることで診療範囲を広げることができるということです。
これは、Advanced Clinical Practice (高度な臨床実践)と呼ばれていて経験豊富な医療従事者によって行われる高度な自律性(Autonomy)と複雑な意思決定(Complex decision making)を特徴とする実践レベルであるとされています。
2017年に出版されたMulti-professional framework for Advanced Clinical Practice(高度な臨床実践のための多職種の枠組み)には以下のように明記されています。(リンクは記事の最後に掲載しますね)
人々のニーズの変化に対応した医療を提供するために、新しい働き方、新しい役割、新しい行動が必要である
Multi-professional framework for Advanced Clinical Practice, 2017
医療への貢献と個人的な仕事の満足度を拡大できるよう、医療従事者は適切なキャリア形成の道が開かれていることを知る必要がある
Multi-professional framework for Advanced Clinical Practice, 2017
このため、イギリスでは、キャリアを積むと出来ることが増えます。
処方権だけでも、現在イギリスで処方権を獲得できる職種はGP(かかりつけ医)、看護師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、足病医師、救急救命士、放射線治療技師などがあります。
もちろん、最初から処方権が与えられてるというわけではなく、認定のコースを修了することによって処方権が与えられます。
イギリスの理学療法士のキャリア
イギリスでは2019年からFCP(First contact practitioner)と言って、筋骨系の疾患がある場合、患者さんが直接、専門的なスキルを持った理学療法士に相談できるようになっています。
FCPを導入することによって得られるメリットは
- かかりつけ医(GP)の負担を減らす
- 医療サービスコスト削減
- 待ち時間の減少
などがあるようです。
筋骨系の疾患の診断、治療において、GP(かかりつけ医)の「中間者を省く」ことで、正確なアドバイスやエクササイズが最初の日から処方され、患者が最初の日からリカバリーをコントロールできるように支援します。
FCP Physiotherapist(ファーストコンタクト プラクティショナー)が出来ること
イギリスの一般の理学療法士に出来ることは、独立の診断、治療などがありますが、FCPになると加えて
- 特定の薬の独立処方 (制限付き)
- X-ray検査の紹介
- ステロイド薬の注射
なども出来るようになります。
FCPになれば全て出来るようになるというわけではなく、医療行為専門の
教育課程を経ると出来るようになります。
私の感想
イギリスの国民医療サービスは全国民無料で受けれますが、待ち時間が長く、予算不足のため、今現在限界点に達していると言われています。
そのため、医療制度改革を余儀なくされ、今のシステムが構築されました。
比較的上下関係が少ないイギリス文化も手伝って、迅速な対応が出来ているのだと思います。
予算により常にサービス内容やシステムが変わっているので数年後はまた大きく変わっているのかもしれません。
超高齢化社会の中で、医師不足、勤務医の過重労働が懸念される中、即効性が期待される方策として他医療業種の役割拡大は即効性が期待される方策だと思います。
個人的には自分で判断できる範囲が広がることで、仕事がもっと魅力的なものになるなぁ、と思いました。
長いキャリアずっと同じ業務だと面白味がないので、こうして新しい学びと成長の道が開かれているのは医療従事者の仕事の満足度を上げ、離職率を下げるのにも多いに役立つと思います。
参照:
Multi-professional framework for Advanced Clinical Practice, 2017
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